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METライブビューイング「タンホイザー」
全編通じて見るのは初めての「タンホイザー」、5時間近くの長丁場でしたが、これがもう落涙するほどの感動作でした。わたしがあちこちで書き散らかしているご贔屓バリトンのペーター・マッテイがヴォルフラム役ということで、一時は真剣に渡米まで考えましたが、さすがに叶わずライブビューイングでの鑑賞となりました。タイトルロールのボータの印象がほとんどない位の素晴らしいヴォルフラム!思い出すだけで泣きそうになるほどです。2幕の歌合戦シーンでは一人目から「もうヴォルフラム優勝!」とわたしは心の中で喝采を上げたし、3幕「夕星の歌」には胸がぎゅーっと締め付けられました。直前のエリザベートへおずおずと「わたしではだめですか?」と問うシーンは「エリーザベト、なぜ拒む!?」と言いたくなる程。これ、マッテイじゃなかったらこんなに泣けなかったと思います。
わたしはオットー・シェンク演出のワーグナーはとても好きで、「マイスタージンガー」も最後の合唱シーンは何度見ても泣いてしまうのだけど、この「タンホイザー」もしかり。でもそれは救済されたタンホイザーとエリーザベトにではなくて、ひたすら影に徹したヴォルフラムに対して。真摯に愛に向き合い忠誠を誓う騎士なのに、それと正反対の道を行き、神の許しをも得られなかった友とその恋人を思い続けるなんて誠実な役はマッテイにしかできないと思います。ラストの美しい歌唱抜きではこの物語はここまで感動的に仕上がらなかったことでしょう。
今年の3月に幸運にもMETでマッテイ氏ご本人に会い、ちらっとお話ができたのだけど、10月もがんばって実演を見るべきでした。来シーズン、もしもマッテイがワーグナーを歌うなら、その時は駆けつけたいと思います。
「トスカ」新国立劇場オペラ
どうやら今シーズンの新国オペラで一番売れてるらしい「トスカ」の千秋楽に行って来ました。なるほど、人気なわけだなと痛感した作品。まず演出がオーソドックスながらも重厚で美しい。そして主役3人の安定した歌唱。ここのオペラで3人ともバランスが取れてる歌唱ってけっこう珍しいんですよ。それがこの日は叶ってました。 トスカ役マリア・ホセ・シーリさんが公演期間中盤で倒れたと言うことでしたが、この日は最後まで完璧に歌い上げてくれました。彼女の声は高音でもピシッと決める所は決め、みんなが知ってる有名アリアもみんなが満足できる風に表現できる人だなぁという印象。イメージ的にスザンナ・フィリップが近いかもしれません。
カヴァラドッシ役ホルヘ・デ・レオンもスマートで正義感溢れる若き画家という雰囲気がピッタリ。声にも説得力があり、「星は光りぬ」の運命を嘆く歌唱にはこちらの胸まで痛くなるほど。 そしてスカルピアのフロンターレはさすがですね。圧倒的な存在感。ダースベイダーばりに魅力的な悪役をこなしていました。この方ひとりお芝居もずば抜けて上手い。 この3人の熱唱にそうような棒と音楽だったかと言うと、それはまた別のお話になってしまうのですが…。せっかくのプッチーニのメロドラマなのにどこか情緒に欠け、音の強弱でしかドラマを盛り上げられない、と感じてしまいました。 マリア・ホセ・シーリさんは来年4月に「アンドレア・シェニエ」でマッダレーナを歌いに再来日する予定です。こちらも見に行きたいなと思います。 2015/11/29(日)14:00 新国立劇場オペラパレス 3階 L1列
英国ロイヤル・オペラ「ドン・ジョヴァンニ」
ザルツブルクから帰国後、一本目のオペラは英国ロイヤルオペラの来日公演「ドン・ジョヴァンニ」でした。この演目は今年の3月にMETでマッテイ&ピサローニという個人的黄金コンビを見ていたので、ハードルがをかなり上げてしまっていたのですが、それを抜きにしても複雑な思いが残りました。 舞台は最近流行のドールハウス風のセット(ROHはキューブ状セットを組んでおり、かなり簡素)にこれまた流行のプロジェクション・マッピングを組み合わせると言うもの。 オープニングの映像はDGが関係を持ったと思われる女性の名前を延々と映し出す、というのはユニークでいいと思ったのだけど、基本これだけでした。この投影の繰り返し。東京で見る凝ったプロジェクション・マッピングに慣れていると、かなり物足りなく感じました。必要以上にカラフルにする必要はないのだけど、モノトーンでワンパターンな印象です。しかし「シャンパンアリア」でのグルグル回す映像は効果的。わたしは軽く三半規管をやられた感覚に陥りましたが、曲の内容からしてこれは成功だったのかも。 タイトルロールのダルカンジェロ、他の演目でも見ていたしDGも映像ではさんざん聴いていたけど、さすがにこれははまり役。ハンサムでセクシーなイタリア男という点では、現在右に出る人はいないのでは。METのマッテイもかなりいいセン行ってたけど、イタリア人が演じるDGというのはやはり重みが違いますね。 レポレッロ役のエスポージトは初めて聴きましたが、お芝居も歌も「これぞレポレッロ!ただしROHでね」という感想。侍従としての雰囲気は充分ですが、わたしはレポレッロはDGとそこそこ対等な雰囲気を持つ歌手の方がやっぱり好み。タイプが全然違うので比べるべきではないけれど、やはりピサローニさんのレポレッロが見たいなぁ…としみじみしてしまいました。 ドンナ・エルヴィーラ役のディドナートさん。この公演は正直彼女目当てに買いました。彼女ならきっと面白いエルヴィーラを見せてくれるはず!と。しかしこの演出のエルヴィーラは自分を捨てた男に必死に追いすがるさみしい女性という設定でした。なので、ディドナートさんのキャラがイマイチ生かされてない感は否めず。ひたすら真面目にDGを恨みながらも思い続ける、という雰囲気にちょっと違和感がありました。それでも歌唱はさすが。あの響きの悪いホールでもがんばって聴かせてくれました。 ドン・オッターヴィオ役のヴィヤソン、4年前のMET来日公演で聴いた以来なんですが、残念な感じでしたね。あのアリアもいっぱいいっぱいで、聴いているこっちがハラハラしました。仕方がないにしてもちょっとさみしい。 パッパーノの指揮について少々。序曲はハエが止まるんじゃないかと思う程のゆっくりしたテンポでびっくり。その後はあまり気にならなくなりました。アリアになるとまたかなりテンポを落としたのは、これはじっくりと歌わせ、聴かせるためだと思います。歌手もかなり丁寧に表現していました。ROHオケは素晴らしいですね。弦は特に豊潤。土曜の演奏会が楽しみです。 演出そのものは悪くないと思いますが、最後のひとり残されしょんぼりしたDGは見たくなかったな。今回はラストをいわゆる「ウィーン再演版」(地獄落ちの後、6人が出て来るが最初が省かれている)を使っていました。わたしが今まで鑑賞していたのはノーカットで全員が歌うバージョンだったので、「あれ?」と肩すかしを喰らった感じ。それも6人が両サイドからDGを糾弾するように「これが悪人の最後」と歌います。けっこう好きな最後のシーン(レポレッロが「仕事探さなきゃ」とかエルヴィーラが「修道院にでも行くわ」と今後のプランを歌う所)が飛ばされてしまったのでちょっと消化不良…。耳慣れた版と違うってこんなに違和感を感じるものなのね。刷り込みって怖いわーと思った夜でした。 NHKホール 9/13/2015 15:00~ 3階 R1列
Werther (Konzertant)
わたしのザルツブルク滞在最後の演目は演奏会形式の「ウェルテル」、当初シャーロッテ役だったガランチャがキャンセルしてしまい、代わりはゲオルギューに。ゲオルギューって清純なシャーロッテなイメージじゃないよね…と思ってしまいましたが、演奏会形式ということで目をつぶりましょう。上画像は最後のカーテンコールの様子なので後半に着た紫のドレス姿ですが、前半は大きな花柄のズルズルしたお召し物で、余計迫力が増していました。 ゲオルギューは声も迫力と貫禄に溢れているし、ソプラノとして華はあるのですが、やっぱりシャーロッテじゃないよね…と思いながら聴いていました。(なんか所作も雑だったし…) ウェルテル役ベチャワは聴いててすごく安心できる声。面白みがないと言ったらそれまでなんだけど、彼の歌唱はとても真面目です。キャラクター没入型ではないけど、楽譜に忠実な印象でした。 演奏会形式のオペラはよっぽど好きな演目じゃないと途中集中力がなくなって睡魔に教われてしまうんですよね。今回もご多分にもれず、前半はウトウトした瞬間が。(滞在中初めてでした…)後半は劇的に盛り上がるので、引き込まれて聴いていましたが。ラストがバン!という音で終わるのはやはりオペラでも演奏会形式でも衝撃的。この音で「あぁ、これって本当に悲劇なんだよね」と毎回思うのでした。 これで4日間に渡って9演目すべてを無事に鑑賞。こんなに集中して見たのって初めてじゃないかな。夢の様に楽しい毎日でした。夏の欧州の音楽祭はリピートする方が多いと聞きましたが、すごく納得できました。来年の参加も狙いたい。 Großes Festspielhaus 8/15/2015 21:00~ Parterre Rechts 27列 4●番
Le Nozze di Figaro 8/15/2015
「フィガロの結婚」2回目はマチネにて。この日は平土間7列目からの鑑賞だったので、演出面もよく観察できました。
まず伯爵役のピサローニさん、登場人物で一番衣装数が多かったと思います。それだけお洒落でスタイリッシュ。これは地下ワインセラーのシーンで、この後アリア「Hai gia vinta la causa」に続きます。このアリアがまた迫力があって素晴らしかった。エッティンガーはアリアひとつ取っても「間」を大切にするなぁ、としみじみ。 もうひとつ好きなシーンがこちら。「Susanna, or via, sortite」、夫人とライフルの奪い合いになるのだけど、この一連の演技の流れと歌唱がピッタリで、本当にドラマを見ているかの様でした。 1回目と変更シーンもありました。上画像の伯爵夫人お着替えシーンは2回目はなかったですよね?フリッチュしかできないなかなか素敵なシーンだったのでちょっと残念。映像には含まれていると思います。 素敵なラストシーンも貼っておきましょう。カーテンコールはここからキャスト一人ずつが出て来て拍手に応えます。素敵でしょ。 こちらはわたしが撮ったカテコ写真。最後までベイツさんというイメージが抜けなかったフィガロ役のアダム・プラチェツカ、1985年生まれとまだ若いんですね。後日某パーティーでの写真を見て、ずいぶん舞台と雰囲気が違うな、と思いました。従来の「知恵者」としてのフィガロのイメージともちょっと違うけど、伯爵とのバランスは良かったと思います。
スザンナのマルティナ・ヤンコヴァ、ケルビーノのマルガリータ・グリシュコヴァも芸達者で楽しめました。ルカ・ピサローニさんに関してはもう本当にハマリ役としか言い様がないですね。彼のレポレッロも、もう他の人では聴きたくなくなる程素晴らしいけど、この人は本当に自分の魅力をよく知り尽くしていると思います。歌唱にも品があるので、ヘンリー8世みたいな威厳のある役も遜色ないし(たしか36歳位で歌ったのでは?)、今回の伯爵やレポレッロのようなコメディセンスのいる役柄も難なくこなす。現在40歳なので、この先もずっとこの路線というわけにいかないだろうから、そろそろヴェルディあたりお願いしたい所です。(インタビューでは「まだちょっと早い」みたいなことをおっしゃってましたが)
あと、ぜひドン・ジョヴァンニのタイトルロールを!(こちらも近い将来計画進行中とのこと)
今後も追いかけて行きたい歌手です。 Haus für Mozartの平土間。10列目くらいまでほぼフラットなので、よっぽど前列じゃない限り要注意です。 終演後、ピサローニさんのサイン会がありました。日本で行うサイン会はいつもずらりと大行列で小1時間はかかりますが、こちらでは10人くらいしか並ばないんですね。昨年行われたヨナス・カウフマンのサイン会ですらそんな感じだったそうです。文化の違いかしら…。
サインに名前まで入れてもらっておしゃべりしてたら、奥様のケイトが愛犬トリスタンを連れてホワイエにお迎えに。その場にいた女子全員、愛くるしいミニチュアダックスを見て歓喜の悲鳴。トリスタンを含めた大撮影隊会になり、ピサローニ夫妻と「またどこかで!」とさよならしました。ほんと、またすぐ会えるといいな。 Haus für Mozart
8/15/2015 15:00~
Parterre rechts
7列 28番
Il Trovatore
入手困難チケットもうひと演目「イル・トロヴァトーレ」、こちらも本当にギリギリに無事入手して見て来ました(そのへんも後日詳しく)。2階右寄りの席でしたが、音の響きやバランスも良く、演出全体もまんべんなく見ることができる位置です。 昨年上演したものを放送した時に見ていたので、演出に関しては新鮮味は感じないものの、赤を基調とした重厚な雰囲気と、現代の美術館をうまくリンクさせた手法はやはりモダンで斬新。多少強引に感じた箇所もあるものの、ヴェルディの音楽とネトレプコの迫力で帳消しに。 ネトレプコ出演の全幕物のオペラは初めて聴いたのですが、彼女もやはり映像ではわからない魅力のある歌手。存在感とか声の響きは生の舞台でしか伝わらないものがあります。彼女の動きを目で追い、声に耳を傾けると、低音で微妙ブレるクセとかそんなに気にならなくなります。そのへんはさすがスター。 ルーナ伯爵役のルチンスキーもネトレプコに絡む粘着な感じがハマってたし、マンリーコ役メーリも実直さが出てて素晴らしかった。昨年ローマ歌劇場来日公演で聴いた時より声に張りも伸びも出て来たような気がしました。ただ「見よ、恐ろしい炎を」はちょっと落っこちた所があったのが惜しかった!後半はうまく行ったんですけどねぇ。 ノセダの指揮も多少テンポが速い気もしましたが、聴かせどころはじっくりと落とす、割と原典に忠実な印象でした。 オケも歌手も非常にバランスの取れたこれぞヴェルディ!な演目をザルツブルクで聴く不思議。いい経験でした。 演出についてもう一つ。プログラムにわざわざ「A Night at the Museum」という文章が載せられているほど、この演出では絵画がふんだんに登場します。特に「聖母子像」は何種類も出て来ました。トロヴァトーレの物語そのものが「母子」を伏線としたものなので、そのへんを上手く取り入れています。 カーテンコールでのネトレプコ。彼女はこういうコスチュームがよく似合います。今度はもうちょっと表情の見える席に座って、そのへんも観察したい。 ノセダの振るイタリアものの安定感。さすがでした。 Großes Festspielhaus 8/14/2015 20:30~ Rang Rechts 6列 31番
Fidelio
今年のザルツブルク音楽祭で入手困難チケットと言えばこちらの「フィデリオ」と「イル・トロヴァトーレ」。特にフィデリオはヨナス・カウフマン出演に加え、新演出で大人気ということでギリギリまでチケットが出て来ませんでした。わたしは運良く前日に入手でき(詳細はまた後日詳しく)喜び勇んで見に行って来ました。
直前に放出された席は平土間後ろの一段高いボックスシート(Logeと言います)。正面の1列目だったのでとても見やすかったです。
さて本編ですが、演出はかなり不可解。わたしは実演を見るのが初めてだったので、あらすじと目の前で繰り広げられる光景がなかなかうまく組み合わせられない状態でした。フィデリオはセリフが入るオペラなのですが、今回の演出ではそこは全部カット。代わりに効果音が入ります。これが金属音のようなものや、人の呼吸音だったりと、現代アートの映像作品のような趣き。
そしてレオノーレに「影」役の女優さんが付き、彼女がずっと横で手話をしているのが特徴的。舞台装置そのものもシンプルだけどなんだか心理的に追いつめられているような気になる作りで(これはその後友人達と「答え合わせ」をしているうちに納得したんだけど)、咄嗟に「診療室?」と思ってしまいました。視覚的には実験的でとても面白いとは思うけれど、初見で見るものではなかったな、と苦笑。ラストシーンの解釈は人それぞれだと思いますが、これは見たままだとかなり悲惨ですね…。そのへんもまた観賞後に話し合いたい感じです。
カウフマン演じるフロレスタンは後半からの出演です。正直前半は「???」のまま過ぎてしまったのですが、後半からは魅せられました!フロレスタン登場シーンのアリアのpp、弱音ながら強さが感じられる美しさにははっとさせられたし、やっぱりこの人は演技がすごいですね。演出上、彼はずーっとびくびくおどおどしているのですが、倒れ込んだり怯えたりのお芝居が本気で気の毒に思えるほど。声も柔らかで良く通るし、ようやくファンの皆さんが言っている事が納得できた気がしました。(リサイタルしか聴いた事なかったので)次は全編に渡って出ている作品をぜひ見たい。
指揮のウェルザー=メスト、すごく良かったです。風変わりな演出をものともしない「我が道を行く」感じの音作りにプライドを感じました。前述したように効果音での演奏の中断ってオケ側にかなり負担を強いるんじゃないかな、と思ってましたが、実際演出家と指揮者の間には確執があったという噂です。それを裏付けたのは後半「レオノーレ3番」の演奏。これはこのオペラの中で一番盛り上がったと言っても過言ではない、迫真の演奏でした。オケ全体がフルスロットルで、今までの鬱憤を晴らすかの様。この夜一番のブラボーはこの瞬間でした。メストもオケを2回も立たせて観客の熱狂的な声に応えていました。
ザルツブルク音楽祭での新演出オペラは毎回話題をさらいますが、フィデリオは評論家受けは良かったそうです。この手の斬新な演出もまた勉強、カウフマンで初めて聴く全幕オペラといういい経験が出来ました。 Großes Festspielhaus
8/13/2015 20:00~
Parterreloge 4
1列 5番
Le Nozze di Figaro 8/12/2015
到着日の夜は「フィガロの結婚」ダン・エッティンガー指揮、伯爵はルカ・ピサローニが歌います。出発前にmidiciでストリーミングやネットで画像も見ていたけど、実演は想像以上に楽しい作品でした。上画像のように1〜3幕はこのドールハウス状の舞台装置で話が同時進行します。この演出がすごく新鮮。フィガロの部屋(1階真ん中)でスザンナとフィガロが伯爵をこき下ろしている隣の部屋で、伯爵が起きて来て身繕いしながらコーヒー飲んだり…というシーンが展開されます。真ん中の階段ももちろんちゃんと使うので、歌手は動線や演技の面で大変だったと思います。 「ダウントン・アビー」ファンなら皆さん「あ!」と思う程、この舞台はそれを意識してますよね。キャラクターもかなり被る感じ。特にフィガロはもうベイツさんにしか見えない。色々な演出でこのオペラを見て来ましたが、これはかなり秀逸な作品でした。ストーリーと時代がマッチするギリギリな設定だったのでは。 エッティンガーの指揮(弾き振り)は思ったより緩急があり、意外な箇所でためてみたり、「あら、ここを?」という所はテンポを上げたり。一点感心したのは(演出家の指示かもしれませんが)伯爵夫人に重点を置いた演奏だったということ。各幕最後の暗転直前は必ず彼女にスポットライトが当たる演出だったことからもわかります。特にラストシーンの「わたしは許しましょう」と自分を苦しめた伯爵の謝罪を受け入れるシーン、ここでエッティンガーは歌い出しの前に10秒くらい完全な静寂を求めました。この間があるため、3時間以上に渡るドタバタからガラリと荘厳な雰囲気に切り替わりました。最後の重唱は賛美歌のような美しさと清廉さに満ちており、「結局これが言いたかったのね」というのに値するエンディングでした。 が、これで終わったら本当に「今までなんだったの?」になってしまうと思ったのか、ラストシーンの後(映画で言うとエンドクレジットですね)で、出演者がセットの中で結婚パーティーを賑やかに始めるのです。観客が拍手のタイミングを逸してしまい、舞台上で繰り広げられる祝宴を眺めていると、キャストの一人が拍手を始め、それにつられてようやく客席もうわーっと拍手、というとても自然で舞台との一体感が感じられる流れになっていました。これはもう「多幸感」のひとこと。わたしはこの後もう一回「フィガロ」の鑑賞を予定していたので「この舞台をもう一回見られるんだ!」とうれしかったのも覚えています。 ピサローニさんは今までの伯爵のイメージをガラリと翻し、よくある倦怠期のちょっとわがままなスマートな男性を演じていました。ここの所コミカルな役柄でしか見ていませんが、彼は本当にこういう役をやらせたら素晴らしい。それでいて「Vedro mentorio sospiro」では凄みすら感じたし、全編通して「お、次はこの曲!」と楽しみにかつ安心して聴ける雰囲気です。バスバリトンはテノールの様になかなかパーッと派手に売り出したり人気者になりにくいですが、これからも追いかけて行きたいと思います。 伯爵夫人のアネット・フリッチュは昨年のザルツ「ドン・ジョヴァンニ」でもドンナ・エルヴィーラを歌っていましたが、今回の方が彼女の美しさとか繊細さが際立つ役だと思いました。歌唱はひやっとする所が何度かあったものの、そのへんは雰囲気でカバー。来年も出るのかな? (フィガロ、ケルビーノについてはまた別の日に) 幸せなエンディングの後のカーテンコール。コンサバトリーが英国っぽい。 ピサローニ家の愛犬、トリスタンも今回舞台デビュー。一幕冒頭に伯爵の愛犬として登場します。最終日にはカーテンコールにも出たとか。出待ちの時にモフモフさせてもらいました。 1本目がこの作品で本当に良かった!と思いながらホテルに帰還。先はまだ長い。 Haus Für Mozart 8/12/2015 19:00~ 1 Rang Seite links 1列 8番
ヴィットリオ・グリゴーロ テノール・リサイタル2015
いつもとは明らかに客層の違うオペラシティで、話題のテノール、グリゴーロ君のリサイタルを聴いて来ました。昨年のMETライブビューイング「ラ・ボエーム」でその歌唱と愛らしい?演技がずっと気になっており、オペラではないけどリサイタルでも来日してくれるなら!といそいそと出かけて参りました。 前半ベッリーニ「6つのアリエッタ」、ロッシーニ「音楽の夜会」あたりはなじみのない曲なのだけど、声量のすごさと音域のコントロールの上手さはよくわかりました。ピアニシモも綺麗ですね。ヴェルディ「海賊」での有名アリアはさすがの突き抜け感。なんだかキラキラしてました。後半になるとますます身振りも表現もさらに派手になり、舞台狭しと縦横無尽に動き回るのが普通のリサイタルでは珍しいくらい。踊ったり、飾ってあるアレンジメントから花を抜いてお客さんに手渡したり、まぁ、とにかくアクションが激しいこと!馴染みのない曲でもあれだけ心情豊かに歌われるとこちらにも充分伝わって来ますね。そしてリサイタルには珍しく曲間のトークが多いのも特徴的でした。特に印象に残ったのがパヴァロッティとのエピソード。グリゴーロは子役として「トスカ」でずっと共演していたそうです。舞台袖で毎回ハグしてもらったという思い出話の後に、今や押しも押されぬ人気テノールとなった彼の『星は光りぬ』は感動的でした。 アンコールは他にも「愛の妙薬」から『人知れぬ涙』(これはどうしても生で聴いたフローレスの強烈な印象が…)、シューベルトの『アヴェ・マリア』、そしてもう終演かとお客さんが帰り始めようとした時に始まった『オー・ソレ・ミオ』。会場の熱狂はオペラ1本分と同じように感じました。 グリゴーロの声は音源や映像で聴くともっとベルカントかと思ってましたが、それより少々骨太なしっかりした声でした。やはり生で聴かないとわからないものってたくさんあるなぁ、と実感。次回はぜひオペラで聴いてみたいですね。 終演後のサイン会は、過去オペラシティ・コンサートホールでこんな大行列見た事ない!と思う程の人数が残りました。グリゴーロ君、最後の方はさすがに表情が消える程お疲れの様でした…。これに懲りずにまた来て下さいね。
東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.6 『ニーベルングの指環』第1日《ワルキューレ》
昨年に続いて春祭リングチクルス「ワルキューレ」を聴いて来ました。昨年の2時間半休憩なしの「ラインの黄金」に比べ、時間的には長いけど間に2回30分も休憩できたので疲労感なし、むしろ高揚感だけが増して行く感覚に。リングに限らずワーグナー初心者のわたしには、いつも聴き終わって「やれやれ終わったー」という気持ちになるんですが、この日は「もう一回聴きたい!早く続きが見たい!」と思う程でした。 演奏会形式なので歌手のルックスやお芝居はあまり気にならなかったのですが、それでも各々が重要なシーンでは印象的な動きをするんですよね。 一番「おぉ!」と思ったのは、二幕でフリッカが夫ヴォータンを説き伏せて退場する時に、すれ違いに入って来るブリュンヒルデを「ふふん」と勝ち誇った顔で一瞥するシーン。ここまでの夫婦の痴話げんかシーンはいつも眠くなってしまうのだけど、フリッカ役のクールマンの歌唱の素晴らしさに圧倒されました。クールな表情にも釘付け。昨年の「ラインの黄金」では一瞬だけ出て来るエルダの歌唱も印象的でしたが、やはりこの役だと映えますね。上品でクールな美貌のフリッカは、従来のイメージとは違って新鮮でした。 そして皆さんが(もちろんわたしも)期待していたジークリンデ役マイヤー様!何でしょう、あの貫禄と存在感。それでいて心情の描写は本当に乙女!なのが素晴らしい。わたしの人生初のワルキューレ実演をマイヤー様で聴けたということは多分自慢していいのだと思う…。 翻って男性陣の印象は薄かったです。ジークムント役ディーン・スミスの声はあの役にはちょっと軽い?と思ったし、フンディングは楽譜見過ぎ。ヴォータンも1,2幕は声が全然怒ってなかった。ラストだけは映像の効果も相まってぐっと来るものがありましたが。 N響の演奏は今回も手堅かったと思います。ヤノフスキの指揮で聴くのは二度目でしたが、正直言って新国で聴くワーグナーより、こちらの方がずっとドイツ的な印象を持ちました。コンマスは去年に引き続きキュッヒル氏、彼に明らかに引導されてキリリと引き締まった弦の音が堪能できました。 春祭演奏会形式ではおなじみの背後のスクリーンですが、今年は特にシンプルさが際立ちました。あまり動きがあると演奏と歌に集中できなくなるので、あの程度で充分だと思います。最後の炎のシーンはとても映画的だったので、ここを印象づけるためにそこまで抑えていたのかも。 字幕担当は今年も広瀬大介氏。情報量としては文字数制限のある中充分だと思いましたが、たまに突然文語体が出現するのに面食らったりもしました。 去年、今年と満足度の大きかったリングチクルス、来年にも期待できそうです。できれば明日の火曜日もう一度聴きたいくらいの「ワルキューレ」でした。 2015.4.4(土)15:00 東京文化会館 大ホール 2階 R1列
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