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「サラの鍵」
古い写真の中の、胸に黄色い星をつけた少女――いま彼女を探すこと、それは私自身を探すことだった。
1942年のパリにいたユダヤ人の少女と60年後の2002年のパリで暮らすアメリカ人女性ジュリアそれぞれの一人称が交錯する形で物語は語られます。パリと言う共通項だけで始まった話が中盤で一気に加速しカチリと音を立てるようにリンクする様は見事。ストーリーテラーとしての著者の才に感嘆する一方で、この物語が実話をベースにしていることが重くのしかかりました。1942年7月16日にパリで起こったユダヤ人一斉検挙、通称「ヴェルディヴ」についてはどこかでうっすら読んだ記憶があるものの、これがフランス警察の手によるものとは本作を読むまでまったく知りませんでした。事実、若いフランス人のほとんどがヴェルディヴそのものを知らなかったり、もう少し年配者になるとこれを「フランスの恥」として語りたがらないそうです。作者のデ・ロネはフランス人とイギリス人を両親に持ち、フランス、アメリカ、イギリスで教育を受け、現在はパリ在住。原文は彼女の母語である英語で書かれており、その理由として「アメリカ人ジャーナリストの主人公の気持を語るには英語が相応しかった」と語っています。(アメリカ人から見たフランス人ってたしかにこんなだろうな、とクスリとさせる描写もありました)こういう出自の彼女ならではのスタンスで語られているので、どちらか一方に肩入れした描写はありません。むしろ作中のアメリカ人と言う完全な「異邦人」の目で語られる事件はある意味非常に公平に感じました。
さてヴェルディヴですが、これは「ヴェロドローム・ディヴェール」という屋内競技場の略称であると同時に、今ではユダヤ人一斉検挙の意味として使われているそうです。ここに閉じ込められた13,152人のユダヤ人は最終的にはアウシュビッツに送られ、生存者は約400人と言われています。かつて競技場のあった場所に主人公たちが取材にいくシーンで聞き覚えのある通りの名前やメトロの駅名を目にしました。ここはエッフェル塔近くの15区にあたる地域であり、わたしが5月においしい鉄板焼きフレンチを楽しんだ場所。文中の記載によると現在の内務省の向かいに競技場があったとされているので、まさしくそのお店の目の前だったわけです。またこのすぐ近くのグルネル大通りブランリー河岸の交わるあたりこの事件の碑銘があったり、最寄り駅のビラケム駅にも当時の写真が展示されてるそうです。このあたりは数回歩いているはずなのですが、知らないって恐ろしい。何の注意を払うことなく通り過ぎてしまったのですから。 いわゆる「ホロコースト文学」というジャンルの作品は今までけっこう読んできました。「アンネの日記」をはじめ「ソフィーの選択」「戦場のピアニスト」「夜と霧」などなど。ほとんどがユダヤ人側から語られていますが、「サラの鍵」はアメリカ人ジャーナリストの謎解きというミステリー要素をからめつつ、一人の少女の運命を描いた秀作だと思います。また現代のフランス人がこの事件に向き合った時の様々な反応も描いており、非常に考えさせられました。もうすぐ7月16日がやって来ます。今年はこの事件の犠牲者に思いを馳せてみることにしましょう。 最近のベストセラーの常として、この作品もさっそく映画化されます。ヨーロッパでは2010年10月13日「Elle s'appelait Sarah」のタイトルで公開。ジュリア役はクリスティン・スコット・トーマスです。また作者タチアナ・ド・ロネのTwitterはこちら。公式サイトにはかわいいピンクのケースのiPhoneと写る画像が掲載されてるし、Twitter投稿もiPhoneからが多いので彼女もなかなかのiPhone愛用者のようです。 Trackback
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