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「小澤征爾さんと、音楽について話をする」

発売日に届いたのに読了まで時間がかかった一冊。というのも、本書内で語られてる音源をいちいち確認して読み進めて行く事がなによりも楽しい時間だったから。冒頭のベートーヴェン ピアノ協奏曲3番の章だけで数日かかりました。まったく同じ音源を探し出す事はできないまでも、聴きながら読むとマエストロと村上さんの言いたい事がよく伝わって来ました。個人的にはマーラーの解説も大変興味深かったです。マーラーと言えば必ず考えなくちゃいけないユダヤ人としての苦悩。それを小澤征爾さんは師匠でもあるバーンスタインのそれと照らし合わせて語っています。小澤さんによる伝説の巨匠たちのエピソードも大変面白かったです。そういえばバーンスタインのことだけは「レニー」と呼ぶのだけど、あとは「カラヤン先生」「クライバー」なんですよね。もっともバーンスタイン本人がオケのメンバーにも「レニーって呼んでくれ」って言ってたらしいけど。
オペラの章も読み応えありました。知ってたつもりだったけど、この本で「へぇ」と教えられた事もたくさん。
そして最後の章に書かれている、スイスで行われている若手音楽家のためのワークショップ。これは以前NHKのドキュメンタリーで放送してたんじゃないかな。あの場に村上さんがいたとは。番組もよかったけど、村上さんの筆により感動的な章となっています。電車の中で読んでてちょっとじーんと来てしまいました。

元々はマエストロの長女 征良さんと村上さんの奥様が親しくて、そのご縁で実現した対談だそうです。長時間に渡る貴重な会話を村上さんの筆致で読むという贅沢な体験ができました。小澤さんによる「あとがき」も素晴らしかった。年末年始にお薦めの一冊です。
2011.12.11 Sunday 13:05 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|

「巴里ひとりある記」

長らく絶版だった高峰秀子のエッセイデビュー作品が先月復刻版として発売されました。数年前、養女で作家の斎藤明美さんが女性誌にその抜粋と写真数点を載せていたのを見て、ずっと読みたかった本ですが、当時は古書店で1万円程の高値が付いていたので見送っていました。斎藤さんご本人が「オークション等で高値で買う読者がいると聞き申し訳なくて」再販を決められたそうです。さっそく購入して一気読み。
高峰秀子の現役時代を知らないわたしでも、彼女が子役出身でほとんど学校に行かず撮影所で過ごした、ということは知っていましたが、専門教育を受けなくても勢いがあり読ませる筆力は天与の才だったのですね。後年の「わたしの渡世日記」に比べるとやや稚拙な文章ではありますが、着眼点の面白さやシャープな切り口はこの当時より現れています。
ほとんど知人もいない街での生まれて初めての一人暮らし(正確にはフランス人家庭での下宿でしたが)、ここでは誰も「高峰秀子」として自分を見る者はいない、という開放感に溢れたのびのびした文体は、20代の若い女性の日記を盗み見ているよう。パリと言う時間がゆっくり流れる街においては、当時も今も同じような雰囲気だったのでは、とつくづく思いました。

今日出発の今になっても、一寸もパリを去るという気がしない。
そういえばここに着いた時も、外国にきたんだゾという気持がしなさすぎて間が抜けたくらいだった。
私はもう二度と来られないだろうけど、今夜私一人がパリからこぼれ落ちるだけで、明日も明後日も、何の変わりもなくパリは在る。
そしてまた私がやってくれば、パリは静かに、自然に、私をむかえ入れて呉れるだろう。

わたしが一番ぐっと来た文章。パリでもホノルルでもNYでも、同じ思いを噛みしめた方は多いと思います。

発売中の芸術新潮は高峰秀子特集。資料や写真もたくさん掲載されているそうです。
2011.12.02 Friday 23:12 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|

「パトさん」

がんも 大二
羽鳥書店
¥ 1,575
(2011-07-06)

 羽鳥書店から刊行された「パトさん」を読みました。最初に手に取った時の薄い感じと、このユルい画風から「あっという間に読めちゃう大人のための絵本?」と考えましたが、読了してびっくり。これはね、もう泣けます。もう10回くらい読み返しているけれど、毎回涙しています。口コミでじわじわとゆっくり時間をかけてヒットしてもらいたい類いの本です。ぜひ手に取ってみてください。立ち読みは危険。だってほんとに泣けるから。

 作者のがんも大二さんのサイトはこちら
2011.07.13 Wednesday 22:03 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|

「わたしの渡世日記」

 昨年末亡くなった女優、高峰秀子さんのエッセイ「わたしの渡世日記」を読んでいます。数年前に婦人雑誌で「巴里ひとり歩き」の抜粋を読んでから古書店を実店舗やネットで探しているのですが、なかなか見つからず。こちらの「渡世日記」は単行本で入手できるのですが、この度文庫となったので、さっそく入手。読み始めたところ、とても女優さんが片手間に書いたと思えない文章力。特に下巻の終戦直後の様子を書いたくだりには泣かされました。

「わたしが見せた涙で『生』への決別を誓った軍人もあったに違いない。あの日の涙は何人かの人間を殺している」

ここでグッと来ましたね。こんなにストレートに書ける人って凄いと思います。
谷崎潤一郎、太宰治などの作家、小津安二郎、杉村晴子、田中絹代などの映画人と交流の深かった作者による、彼等の人物像の描写も興味深く読みました。
「巴里一人歩き」(「つづり方巴里」)も引き続き探したいと思います。
2011.05.08 Sunday 21:05 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|

ツヴァイク「マリー・アントワネット」

シュテファン ツヴァイク
¥ 620
(2007-01)

おそらく世界で一番フランス革命に詳しいのは日本人女子ではないかとわたしは常々思っているのですが、その原因は間違いなく池田理代子氏の「ベルサイユのばら」。その池田氏が参考文献に使ったとされるのがシュテファン・ツヴァイク著「マリー・アントワネット」です。以前読んだ遠藤周作著のものは「小説」でしたが、ツヴァイク版は豊富な資料を元にしたいわばノンフィクション版(ちなみにソフィア・コッポラが映画にしたのはフレーザー版です)、ウィーンのマリア・テレジアとアントワネットの往復書簡がふんだんに引用されており、2年前にグラン・パレで見た「アントワネット展」で展示されていたのはこれだったのね!と思い出したり。「ベルばら」の元になっただけあって出て来るエピソードはどれも見覚えのある物ばかり。ただわたしたちが伝説のように聞かされていた話(「パンがなければ」発言や処刑前に刑吏の足をうっかり踏んでしまい「パルドン、ムシュー」と丁寧に言ったなど)は作り話である、とツヴァイクはきっぱり否定。その反面、フェルゼンとの秘めた恋は自信を持った筆致で確固たる事実と伝えています。作家の考えを押し付けることなく、文献や資料を添えながら畳み掛けるような文章(比喩の用い方が少々くどい気がしないでもないけど)でアントワネットの短い人生を語っています。日本語訳(3年ほど前に出版された新訳)は「恐い絵」でおなじみの中野京子氏。中野氏の著書のファンでもある私には、まるで氏が書いた文章のように思えるほど自然に思えました。ツヴァイクは1942年に第二次世界大戦の始まりを知り自死を選んだそうです。優れた歴史作家として、彼が予想する世界がこの先迎える運命は受け入れがたい物だったのでしょう。
2010.10.19 Tuesday 23:13 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|

「小さいおうち」

第143回直木賞受賞作、そしてまたもや「本よみうり堂」で小泉今日子の推薦付き。物語は昭和初期から終戦までの激動の時代、のはずなんだけど女中のタキから語られる当時の東京の様子はどこかのんびりとしていて、悲愴感や緊迫感があまりなく、山の手の生活を淡々と丁寧に描いたもの。作中でも現代のタキの甥の次男が「戦時中がそんなにのんびりしてるわけがない」と訝る気持がわかるほど。でも実際、わたしの父も戦時中の東京でそれなりに楽しい子供時代を送っていたそうなので(さすがに終戦少し前には疎開したらしいけど)市井の人々ってそんなものだったのかもしれません。この家の時子奥様が話す「お入りなさいな」「食べておしまいなさい」などの山の手言葉もわたしの祖母はいまだに普通に話すし、舞台となった昭和初期という時代はそれほど昔というわけでもないようです。それでも何とも言えないノスタルジーを感じるのは、今ではなくなってしまった「ハレ」という感覚(めかしこんで銀座や日本橋のデパートに行くとか)や、年末からお正月にかけての行事の描写。話の筋よりもこういった細部にいちいち反応してしまいました。さて、ストーリーは特別大きな盛り上がりを見せるわけでもなく、ラストにどんでん返しがあるわけでもなく、予想通りに淡々と進んできますが、読後感は爽やか。「小さいおうち」という同名タイトルの童話とも感心するほど上手くリンクさせてあります。昭和の話なので全体的に漂う雰囲気は昭和の少女漫画のよう。平成生まれには理解してもらえなさそうな懐かしい気持になる一冊でした。装丁・装画もとっても素敵な一冊。
2010.08.18 Wednesday 23:17 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|

「サラの鍵」

タチアナ・ド ロネ
新潮社
¥ 2,415
(2010-05)

毎週日曜に読売新聞に掲載される「本よみうり堂」という3ページに渡る書評コーナーを楽しみにしているのだけれど、小泉今日子が選ぶ本はなぜかわたしと好みが合う。先週紹介していたのがこの作品で、キョンキョン(私達世代はどうしてもこう呼んでしまうよね)の言葉を信じてAmazonで1クリック購入。まだ装丁も出てなかったので、届いた本を見てビックリ。ハンマースホイの絵じゃないですか!ちょっと運命的なものを感じてさっそく読み始めました。

古い写真の中の、胸に黄色い星をつけた少女――いま彼女を探すこと、それは私自身を探すことだった。
パリで平穏に暮らすアメリカ人記者ジュリアは、60年前にこの街で起こったユダヤ人迫害事件を取材することになった。それが人生のすべてを変えてしまうとも知らず……。国家の恥と家族の傷に同時に触れてしまったひとりの女性が、真実を、そして自分自身の生きかたを見つけようともがく闘いの記録。
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2010.07.07 Wednesday 20:54 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|

「キリスト教とは何か。」

阪急コミュニケーションズ
¥ 600
(2010-02-15)

子供の頃は日曜学校だって通ってたし、アメリカにいた頃はホストファミリーとミサにも行った。ハロウィンの意味だってカトリックとプロテスタントの違いだって知ってるつもりだった。けど、実は全部うろ覚えの知識だったという事がよーくわかりました。そんなわけで全力でオススメします。新書や単行本読むよりわかりやすいです。絵画や教会の写真もたくさん入っているのでビジュアル的にも秀逸。ぜひ。
2010.02.17 Wednesday 09:35 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|

「素顔のカラヤン」

眞鍋 圭子
¥ 840
(2009-07)

新書を読む時は付箋を片手に「ふむ」と思う箇所にペタペタ貼付けるのが習慣なのですが、久々にピンクの付箋だらけになった一冊。長年カラヤンの通訳兼秘書として活躍された眞鍋圭子氏による、タイトル通り「素顔のカラヤン」について書かれたものです。音楽や映像を通したカラヤンのは「神経質」「完璧主義者」という少々冷たいイメージでしたが、筆者は人間として父親としてのエピソードを多く紹介しています。時折カラヤンが筆者にもらす一言が秀逸。ざっと抜き出してみます。
今の自分を冷凍にして20年後に解凍してもらいたいものだね。その頃になればハイディフィニション(光ディスクの規格)による映像の収録技術も編集技術もはるかに発展しているだろうから」(81年ソニー厚木研究所にて)
よいホールとは結局はよい演奏があるホールである」(82年サントリーホールの音響実験のために訪れた調布鹿島建設研究所にて)
このホールは音の宝石箱のようだ」(サントリーホールを評して)
自動販売機にお金を入れれば、入れた金額に応じてレパートリーは自動的に出て来るものだよ」(ベルリンフィルとのレパートリーの広さを例えて)
他にも二人の娘、夫人との家庭人としてのエピソードや、友人であったサントリーの佐治敬三氏、ソニーの大賀典雄氏との親交、スピード狂であったカラヤンの様子などを興味深く読みました。
またサントリーホールの建設計画時、カラヤンに「オルガンちゅうもんはコンサートホールには絶対必要なもんでしょうか?」と尋ね「オルガンのないホールというのは家具のない家のようなものです」という答えを聞き、「ほなオルガンも必要やな」とホールに設置を決めた佐治さんの判断力には一音楽ファンとして感謝です。
ところで大阪のフェスティバルホールは取り壊されたのですね。筆者は昨年9月取り壊し前のホールをリッカルド・ムーティ氏と一緒に訪れたそうです。指揮者部屋の壁にカラヤンとカール・ベームの写真が2枚だけ飾られているのを見て、真顔で「いい選択だね」とポツリともらしたマエストロ・ムーティ。
いい演奏と指揮者の人格は別物であると理解できるのですが、それでも神格化された大指揮者の人間らしいエピソードは読むに値するものでした。
2009.11.22 Sunday 12:06 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|

翻訳家・永井淳さんのこと

      
ジェフリー・アーチャーなどの翻訳で知られる永井淳さんが亡くなりました。享年74歳。高校生の時に「100万ドルを取り返せ!」を読んで以来、アーチャー作品と言えば永井さん訳だったので、この後のアーチャーの新作がスッキリ読めるか心配です。最初に読んだ「100万ドル」や「ロスノフスキ家の娘」などでアーチャーのエンターテイメント小説にどっぷりつかる事が出来たのは、間違いなく永井さんの名訳のおかげ。
翻訳によってその作品の印象は大きく左右されるのは当然。最近では村上春樹訳のフィッツジェラルドやカポーティ、新訳版「カラマーゾフの兄弟」などが「読みやすい、わかりやすい!」と好評ですね。たしかに昭和の中頃に訳された小説はちょっと読みにくい。わかりにくかったり誤訳が見つけられた映画字幕だとネット上で大騒ぎになったりなんてこともよくあります。友人知人に翻訳業を生業としている方が何人かいるので、そのご苦労はたまに耳にして知っているつもりです。そういうことを考えると、亡くなられた永井さんが70代にして年齢を感じさせない生き生きとした文体でアーチャー作品を紹介し続けてくれたのはすごいことだと思います。アーチャー最新作「誇りと復讐」が最後の作品になったのかなぁ。わたしを海外文学の世界に引き込んでくれてありがとうございました、と感謝の気持を込めつつ、ご冥福をお祈りします。写真は書棚のJ・アーチャーのコーナーの一部。なぜか上巻が紛失してたり、下巻が2冊あったりする。
2009.06.10 Wednesday 19:05 | - | trackbacks(0) | Books | このエントリーを含むはてなブックマーク|
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